称名川単独完全遡行の記録
~ROCK&SNOW #074 「称名川本流 単独完全遡行」より~
沢登りを始めて20年、ついに日本の最終目標を達成することができた…
…沢の神髄を「未知の探求」とすれば、ただつなげるだけの行為に意味はないのかもしれない。しかし、この沢だけは全てをつなげ、一本の沢登りとして遡行しておきたかった…
…雨が降り続き、崖の上の小さなテラスで停滞を余儀なくされる。
身動きもままならない狭いツエルトの中で、シュラフも衣類もびしょ濡れになり、心を折られそうになりながらも、その後の好気予報に期待してじっと待った…
…晴天でも全く陽が差し込まない廊下内は、強風、極寒で、まるで別世界のような過酷な環境だった。
…限られたビバークテラスを求め、毎日のように日暮れ後も行動し、急激な気温低下に震えながら、ヘッドランプの明かりで難しい登攀を続ける。
シューズを脱ぐと、足はパンパンに腫れ上がり、激しい痛みが襲う…
2010年に初めて称名滝を登ってから、はや7年。
これまで日本、台湾を問わず、称名川以外で事前偵察を行った沢は一つもない彼が、偵察を含め、称名滝の登攀が5回(9日間)、下ノ廊下に入ったのが13回(40日間)中ノ廊下以降が2回(4日間)、計53日間もの日数を費やした。彼にとっても称名川はそれだけ大きな対象だった。
本人をして
「あまりに長く厳しい遡行に、これまでやってきたことの現実味がない」
「称名川の完全遡行は、今年できなければもう一生できない」
「これまでの沢人生最高の目標にたどり着いたという事実」
と言わせるほどの輝かしい記録。
2016年10月7日~19日 単独 称名滝登攀(オールフリー)
大西良治氏本人から今回の遡行について語っていただくのは、関西では初の企画です。
どうぞ、お聞き逃しなく。